藤本タツキ 17-26 全8本の監督とスタジオ、7人で8本の理由

アニメ『藤本タツキ 17-26』は、藤本タツキが17歳から26歳までに描いた短編8本を、1本ずつ別々に映像にした企画です。配信開始を伝えた電ファミニコゲーマーによると、手がけたのは6つのスタジオと7名の監督です。

作品は8本、監督は7人。1人足りません。

見ていて話ごとに絵柄も色も音も違ったのは、気のせいではないわけです。監督もスタジオも、本当に1本ずつ違います。まずは担当表から。

8本の担当表

並び順は公式サイトの作品一覧、【Part-1】から【Part-2】の順です。原作のどちらの短編集に入っている話かも、一緒に並べました。

# 作品名 原作の収録巻 監督 制作
1 庭には二羽ニワトリがいた。 17-21 長屋誠志郎 ZEXCS
2 佐々木くんが銃弾止めた 17-21 木村延景 ラパントラック
3 恋は盲目 17-21 武内宣之 ラパントラック
4 シカク 17-21 安藤尚也 GRAPH77
5 人魚ラプソディ 22-26 渡邉徹明 100studio
6 目が覚めたら女の子になっていた病 22-26 寺澤和晃 スタジオカフカ
7 予言のナユタ 22-26 渡邉徹明 100studio
8 妹の姉 22-26 本間 修 P.A.WORKS

監督とスタジオの表記は、藤本タツキ 17-26 公式サイトの作品ページを1本ずつ開いて拾いました。

表にすると、収録巻の列がきれいに割れているのが見えます。Part-1の4本がそのまま短編集『17-21』の4本、Part-2の4本が『22-26』の4本。劇場公開のときの2部構成が、原作2冊の区切りと1本もずれずに重なっています。タイトルの「17-26」も、2冊の数字をつないだものですね。

その2冊が出た2021年が藤本タツキのキャリアのどのあたりなのかは、藤本タツキ全作品・映像化年表に並べてあります。

名前が2回出てくるのは渡邉徹明監督だけ

7人の名前を並べます。長屋誠志郎、木村延景、武内宣之、安藤尚也、渡邉徹明、寺澤和晃、本間修。

注目は表の5番目と7番目です。「人魚ラプソディ」と「予言のナユタ」で、渡邉徹明監督の名前が2回出ます。8本を7人で撮った1人分のずれは、ここで埋まります。舞台挨拶のレポートでも、2作品を担当したのは渡邉監督ひとりでした。

面白いのはその先です。2本を作ったスタジオのほうは、2社あります。ラパントラック(「佐々木くんが銃弾止めた」「恋は盲目」)と、100studio(「人魚ラプソディ」「予言のナユタ」)。

ただし、この2社は中身が違います。100studioの2本は、監督も同じ渡邉監督です。対してラパントラックは、2本を木村延景監督と武内宣之監督に振り分けました。2人の監督を送り出したスタジオは、8本のなかでラパントラック1社だけです。

そのラパントラックの2本、監督が違うのにスタッフはかなり重なっています。脚本は両方とも内海照子。美術監督の中村千恵子、3DCGディレクターの越田祐史、撮影監督の田村仁、編集の黒澤雅之が、2本に共通で入っています。

はっきり分かれるのは音のほうです。「佐々木くんが銃弾止めた」は音響監督が本山哲、音楽が井内啓二。「恋は盲目」のほうは音響監督が山田陽で、音楽はyuma yamaguchiです。同じ土台の上で、耳に入るところだけ別の人に預けた形になります。

アニメ制作っていろんな人が関わっているので、一人の人間がコントロールしていくのは難しかったりするんです

木村延景監督(2025年10月17日・新宿バルト9での舞台挨拶。レポートはWebNewtype)

同じスタジオ、同じ脚本家、同じ美術。それでも2本は、違う音で鳴っていたわけです。

渡邉監督の2本は、似せずに離してある

では、同じ監督が撮った2本はどうでしょう。100studioの「人魚ラプソディ」と「予言のナユタ」で共通しているのは、撮影監督の伊藤哲平と編集の長谷川舞。共通点はそこまでです。

脚本は「人魚ラプソディ」が小林達夫、「予言のナユタ」は渡邉監督本人。キャラクターデザインは島崎望と東島久志、美術監督は高橋佐知と金子雄司です。色彩設計はのぼりはること野地弘納、音楽は石塚玲依とKevin Penkin、音響監督は郷文裕貴と小沼則義。画も色も音も、ほぼ総入れ替えでした。

監督自身も舞台挨拶で、「人魚ラプソディ」の作画枚数が1万枚を超えたこと、「予言のナユタ」との差別化を図ったことを話しています。

僕はここを、ラパントラックの鏡像として読みました。スタジオが同じで監督が違う2本はスタッフを共有し、監督もスタジオも同じ2本はスタッフを入れ替えています。似せまいとする力の向きが、ちょうど逆さまなんです。海中のピアノで結ばれる恋の話と、残酷な運命を背負った妹と兄の話。この2本を1人に任せた理由そのものは未発表ですが、任された側は距離を詰めるどころか、はっきり開きにいきました。

原作は2冊、1か月違いで並んでいる

見終わって原作に手を伸ばすなら、必要なのは2冊だけです。

『藤本タツキ短編集 17-21』の発売は2021年10月4日、定価は484円(税込)。収録は「庭には二羽ニワトリがいた。」「佐々木くんが銃弾止めた」「恋は盲目」「シカク」の4本です。

『藤本タツキ短編集 22-26』の発売は2021年11月4日で、定価は同じ484円(税込)です。収録は「人魚ラプソディ」「目が覚めたら女の子になっていた病」「予言のナユタ」「妹の姉」の4本。

1か月違いの連続刊行です。Part-1が刺さったなら『17-21』、Part-2なら『22-26』。表の収録巻の列が、そのまま買う順番になります。

短編から藤本タツキに入った人向けの道順は藤本タツキ作品はどこから読む?目的別の3つのルートに、短編1本をじっくり読むとどうなるかはさよなら絵梨考察―爆発の意味と、カメラの持ち主が変わる瞬間に書きました。8本を見た耳と目のまま読むと、たぶん見え方が変わります。

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